日本大学生産工学部 土木工学科日本大学生産工学部 土木工学科

ドボクの研究

研究クローズアップ!

研究クローズアップ! /その2

宇宙からの目で、
地球の素顔を明らかにする

測量研究室

杉村 俊郎特任教授

人工衛星がとらえる、多様な地球観測データを活用
地上を覆う雲の様子が手に取るようにわかる人工衛星の撮影画像。天気予報などで皆さんにもおなじみでしょう。このように、はるか宇宙から地球を観測する技術を「リモートセンシング」と言い、その用途は気象観測にとどまらず、地上や海洋の温度、植物の分布、大気・土壌の状態、地形の変動、火山の噴火、氷山の調査・観測など多様に広がっています。
土木工学科の杉村俊郎教授は、このリモートセンシングのエキスパートとして、測量学研究室を拠点に衛星データ活用に関する研究に取り組んでいます。
「現在、特に力を入れているのが、2015年に運用が始まった次世代型の気象衛星『ひまわり8号』のデータ利用の研究です。この衛星は、従来機より高解像度の画像が得られ、高頻度な観測も可能です。この特徴を生かした、新しい切り口からのデータ利用を研究しています。そのほか、アメリカの『ランドサット』や日本の『ALOS』など、複数の衛星のデータを利用して、土地の利用状況の変化や、環境の観測、災害調査などを進めています」

リモートセンシングで利用する衛星画像の例。地球の様子を詳細に観測できる。

研究の醍醐味は、予想しなかった地球の姿に出会えること
地球観測に衛星データを用いるメリットはたくさんあります。第一に、広範囲な観測ができる点。飛行機やドローンでは局所的なデータしか得られませんが、たとえばランドサットなら、185kmもの幅でデータを取得可能です。
また、周期的な観測が可能なことも衛星観測の利点。ひまわり8号は2分半に1度の頻度で同じ場所のデータを取ることができます。
さらに、人間の目に見えない情報を含む、多種多様なデータを取得できることも衛星利用の強みと言えるでしょう。
赤外線により地上や海面の温度を捉えたり、レーダーを使って雲に隠された地表の様子まで画像化できます。
「リモートセンシングの魅力は、予想しなかった地球の姿を見たり、普通とは異なる見え方で地球を観測できたりすることです。黒潮の流れや桜島の噴煙といった自然のダイナミックな様子、それに夜の海に浮かぶ漁火など、人間の営みまでも鮮明に見られるのです」

人間の目に見えない赤外線画像に現れた黒潮の姿

デジタルデータやソフトウェアの活用技術を身につけられる
杉村教授の研究室で取り組んでいる最新の研究テーマの一つが、都市部の温度が周囲より高くなる「ヒートアイランド」現象の観測です。基本的には研究室のパソコンを使い、ネットで公開されている衛星データを調べます。しかし、宇宙から調べた地表の温度と大気の影響を受ける実際の地表温度には違いが出ますから、必要に応じてフィールドでの実測も行います。
「現在、東京と札幌など国内の都市の比較も行っていますが、ゆくゆくは地球の半分をカバーするひまわりの能力を生かして、海外の都市との比較も行いたいですね」と杉村教授。
また、研究に用いる衛星データ利用のためのソフトウェアを、誰でも自由に使えるようにネットで公開・提供することも検討中です。
リモートセンシングの研究は、土木の現場の仕事とは関係が薄いように思われがちですが、実はこの分野に関わることは、これからの土木業界で必要な能力を養うことにつながると杉村教授は言います。
「近年、土木の分野では、測量・設計から施工、管理まで、一連のプロセスをIT化して生産性の向上を図る『iコンストラクション』という取り組みが進んでいます。研究を通じて身につくデジタルデータやソフトウェアを使いこなすスキルは、将来、土木業界で必ず役立つはずです」
ITに強い土木エンジニアをめざすなら、ぜひ注目したい研究室と言えそうです。

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