日本大学生産工学部 土木工学科日本大学生産工学部 土木工学科

ドボクの研究

研究クローズアップ!

研究クローズアップ! /その3

期待の国産エネルギー、
メタンハイドレートの生産をめざして

地盤工学研究室

西尾 伸也特任教授

"資源小国"日本の重要プロジェクト、メタンハイドレート開発
石油や天然ガスなどエネルギー資源のほとんどを輸入に頼っている資源小国、日本。その周辺の海に、未来のエネルギー資源として期待される物質が、大量に存在していることを知っていますか。天然ガスの主成分と同じメタンと水からなる固体で、"燃える氷"とも言われる「メタンハイドレート」です。
メタンガスは,燃焼時に出る二酸化炭素や大気汚染物質が、石油や石炭より少ないクリーンなエネルギーです。
メタンハイドレートは、深海底や永久凍土層など地球上の低温高圧の場所に分布しています。日本近海の正確な資源量は不明ですが、静岡県から和歌山県沖の「東部南海トラフ」という海域には、「大天然ガス田」に匹敵する量が存在することがわかっています。
2001年より経済産業省が主導する本格的な開発計画プロジェクトが始まりました。
現在、生産工学部土木工学科で教鞭を執る西尾伸也教授は、このプロジェクトに開始当初から参画し、地盤工学のスペシャリストとして調査・研究活動にあたっています。

人工メタンハイドレートが燃焼する様子。燃えた後には水だけが残る。

太平洋やロシアで、海底地盤の調査に活躍
海底の地層に固体として存在するメタンハイドレートからガスを生産するためには、地層中で減圧してメタンガスと水に分解する方法が取られます。この際に海底の地盤がどのように変化するかを調べるのが西尾教授の主要な役割です。
「東部南海トラフで、2013年に最初の海洋産出試験に成功した後、2017年には生産井を増やして2回目の産出試験をが行われました。生産技術を確立するためにはまだまだ多くの課題がありますが、今後の商業化に向けた開発ロードマップの最終案策定が急がれています。」と西尾教授。
この東部南海トラフの活動と並行して西尾教授は、ロシア内陸にあるバイカル湖の湖底表層に存在するメタンハイドレードの調査やガス回収方法の開発に向けた活動にも携わっています。日本海にはバイカル湖と同じく表層型メタンハイドレードがあるため、パイロット・スタディとして、ロシアの協力のもとで取り組み、2008年には少量ながらも世界初となる水中からのメタンハイドレート回収に成功しました。現在は新たに開発した装置を駆使してメタンハイドレード層の集積状況の確認などを進めています。

バイカル湖では、ロシア科学アカデミーの協力のもと、世界初の水中からのメタンハイドレート回収に成功。

学生たちは最先端の情報や異文化に触れることができる
次世代資源の開発に関わる西尾教授の取り組みの課題や成果は、学生の教育にもフィードバックされています。
研究室では、「一面せん断試験装置」という設備を用いて、円柱状に採取した海底地盤の強さを調べる実験を、学生の手で行っています。また、ゼミでは教授自らメタンハイドレート開発プロジェクトの進捗状況を報告し、学生たちはエネルギー開発の最先端の情報を共有することができます。さらに、メタンハイドレート開発は、石油工学、資源工学をはじめ、材料、応用化学、地球物理、地質、微生物など多様な学術分野および産業分野の横断的プロジェクトですから、学生たちは専門外のさまざまな異文化に触れることが可能。幅広い視点で物事を考えたり、コミュニケーション力を鍛えたりすることができます。
「メタンハイドレード開発は、日本の悲願である国産エネルギー獲得への道を拓くもの。期待が大きい分、やりがいも大きいですね」と研究の魅力を語る西尾教授。
今後のプロジェクトの進展が、大いに楽しみです。

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